はじめに:「まだいいか」と先送りしていた話
こんにちは、神奈川県の藤沢・平塚でレンタルスペース「RentalSpacekite.」とスタジオ「StudioLOKU」を運営している、株式会社キトスタック代表の伊東です。
本業はシステムエンジニア(いわゆるサラリーマン)で、副業としてレンタルスペースを始めて、気づいたら法人化していました。
正直に言うと、「レンタルスペースごときで法人化なんて大げさでは?」という気持ちが長い間あって、そのまま1年近く先送りにしていました。その間に払い続けた余分な税金を考えると、今でも少し悔しい気持ちがあります。
同じような迷いを持っている方に少しでも参考になればと思って、自分の経験をベースにまとめておきます。
2025年の全スペース合算で年間売上が約685万円になりました。ただ、年商が500万円前後に近づいてきたあたりから「個人事業主のままでいいのか?」という不安がじわじわ出てきて、そこから調べ始めた感じです。結論として「もっと早く動けばよかった」というのが正直な感想です。
結論:課税所得が330万円を超えたら本格的に動いていいと思います
先に結論を書いておきます。
課税所得が330万円を超えたタイミングが、法人化を本格検討するひとつの目安です。
理由は3つあります。
- 所得税の税率が法人税の実効税率を上回り始め、税率の差が「金額」として体感できるようになる
- 法人としての社会的信用が必要な場面(企業との取引・銀行融資など)が増えてくる
- 法人だけが活用できる共済制度(小規模企業共済・経営セーフティ共済)で節税の幅が広がる
この3つを順番に説明していきます。
理由1:税率の差が「体感できる金額」になってくる
所得税と法人税、税率の差はどれくらい?
個人事業主の所得税は累進課税です。課税所得が330万円を超えると、税率は20%のゾーンに入り、住民税の10%と合わせると実質30%前後になります。さらに本業(会社員)の給与と合算されるケースでは、スペース事業の利益部分にかかる税率がもう一段上がりやすい構造になっています。
一方、法人税の実効税率は中小法人であれば約23%前後が目安です。
課税所得が330万円を超えた部分については、法人化することで税率差が体感できるくらいの開きになってきます。「ふーん、そうですか」で済む話なのか、「さすがに動かないとまずい」という話なのかは、実際に金額に置き換えてみると分かりやすいです。
たとえば課税所得が400万円のとき、法人化による税率差(約10ポイント前後)でざっくり計算すると、年間で30〜40万円程度の差が出てきます。これが毎年積み上がる、というのが現実です。
私の場合
本業(会社員)の給与とスペース事業の所得が合算されるので、スペース事業の利益が増えると一気に税率が上がりやすい状況でした。
2025年の全スペース合算で年間利益が約160万円という水準になっています。本業の給与と合算すると、スペース事業の利益部分にかかる税率がどんどん上がっていく構造だったので、「これ以上個人のまま利益を積み上げるのは非効率だな」と感じたのが法人化の直接的なきっかけです。
「まだ利益も少ないし」と思いながら先送りしていた1年間で払った余分な税金を考えると、早めに動いておけばよかったと今でも思います。これが一番の後悔です。
理由2:「個人名の請求書」で取引が止まることがある
法人顧客との取引で出てくる壁
副業でスペースを始めたころは、個人のお客さんが中心でした。でも売上が増えてくると、企業の会議室利用や定期利用の問い合わせが来るようになります。
このとき「個人事業主のままだと困る」という場面が出てきます。
- 大手企業の経理部門が「法人との取引しか社内処理できない」と言ってくる
- 請求書の宛先を法人名にしてほしいと言われる
- 契約書の締結を「法人同士でしか対応できない」と断られる
「うちはそんな大口の話はないから」と思うかもしれませんが、定期利用の問い合わせをしてきた企業の担当者が「請求書が個人名だと経理が通らなくて」と一言言った時点で、その商談は終わりです。機会損失として気づきにくいのが厄介なところだと思います。
私自身も、スタジオやスペースの契約まわりで「法人格があってよかった」と思う場面が出てきました。法人と法人の契約のほうが話がスムーズに進みますし、先方の経理担当者も動きやすいようです。これは実際に経験して初めて「なるほど」と感じました。
資金調達の選択肢が広がる
個人事業主の状態で銀行融資を検討すると、審査の根拠を示しにくい場面があります。法人であれば決算書・法人口座・登記情報をもとに審査が進みますが、個人だと「信用の裏付け」を作るのが難しいです。
私は2025年4月に藤沢スペース(約64㎡)を追加オープンしたんですが、立ち上げ月は初期投資の影響でその月だけ赤字になりました。こういう追加投資や事業拡大のタイミングで、資金調達の選択肢を持っておくかどうかは大きな差になります。
「今は必要ない」という状態のときに法人格を持っておくのが理想で、必要になってから動こうとすると審査や手続きに時間がかかって間に合わないことが多いです。この点はSEとして「仕組みは先に作っておく」という考え方と同じだな、と思っています。
理由3:法人だけが活用できる共済制度がある
個人事業主から法人になると、使える節税手段が増えます。特に大きいのが小規模企業共済と経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)です。
| 制度名 | 月額積立上限 | 年間上限 | 節税の仕組み |
|---|---|---|---|
| 小規模企業共済 | 7万円 | 84万円 | 掛金全額が所得控除 |
| 経営セーフティ共済 | 20万円 | 240万円 | 掛金が損金(法人の経費)算入 |
この2つを合わせると、年間で最大324万円を節税枠として活用できます。税率が高い状況であれば、これだけで年間数十万円単位の差になります。
補足しておくと、小規模企業共済は個人事業主でも加入できます。ただ、法人化することで「役員報酬の設定」と組み合わせた節税設計ができる点が大きいです。役員報酬をいくらに設定するかで手残りが変わってくるので、ここは税理士に試算を出してもらうのが一番早いです。自分でうんうん唸って計算するより、専門家に「法人化した場合のシミュレーションをお願いします」と一声かける方が時間の節約になります。
実際の収支と法人化の関係
少し具体的な数字を出しておきます。
私の平塚スペース(RentalSpacekite. 約40㎡・家賃7.7万円)の2025年実績はこんな感じです。
| 項目 | 年間 | 月平均 |
|---|---|---|
| 売上 | 約295万円 | 約24.6万円 |
| 利益 | 約77万円 | 約5.3万円 |
| ポータル手数料 | 約88万円(売上の約30%) | 約7.3万円 |
| 清掃費 | 約11万円 | 約9,200円 |
| 光熱費 | 約21.6万円 | 約1.8万円 |
平均単価は約10,140円/件。12月(売上51.6万・利益24.6万)と3月(売上41万・利益20.4万)が繁忙期で、4月・7月・10月は利益がほぼゼロになる閑散期があります。月によってかなりばらつきがあるのが正直なところで、年間を通してならすと月平均利益は約5.3万円です。
全スペース合算では年間売上が約685万円・年間利益が約160万円という規模になりました。
「年商500万円を超えたら」というのは、この実感値からきています。売上だけ見ると大きく見えますが、ポータル手数料・光熱費・清掃費などを差し引いた利益ベースでは、月平均で見ると「しっかり稼いでいる」というより「積み上がってきた」という感覚です。だからこそ、残った利益をどう守るかの設計が大事になってきます。
法人化の判断フロー
迷っている方のために、私なりの判断基準を整理しておきます。
| 課税所得の目安 | 判断 | おすすめの動き方 |
|---|---|---|
| 330万円以下 | 急がなくていい | まず売上・利益を増やすことに集中 |
| 330万円超〜900万円以下 | 本格検討するタイミング | 税理士に試算を依頼、準備を始める |
| 900万円超 | 早めに動いた方がいい | 毎月単位で税率差が積み上がっている |
課税所得は確定申告書の「課税される所得金額」欄で確認できます。
本業(会社員)の給与と副業の所得が合算されるケースでは、「副業の利益だけ見ればまだ少ない」と思っていても、合算した全体像で考えると思ったより高い税率ゾーンにいることがあります。私もそうでした。まず確定申告書を開いて確認するのが最初の一歩だと思います。
法人化の形態:合同会社か株式会社か
よく聞かれるので、私の考えを書いておきます。
| 項目 | 合同会社 | 株式会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 6万円〜 | 15万円〜 |
| 定款認証 | 不要 | 約5万円 |
| 司法書士報酬 | 5〜10万円程度 | 5〜10万円程度 |
| 合計目安 | 6〜16万円程度 | 20〜30万円程度 |
| 対外的な信用 | 少し低く見られることも | 一般的に信用が高い |
| 将来的な資金調達 | 株式発行ができない | 株式発行・上場も視野に |
私は株式会社を選びましたが、スペース単体の運営であれば合同会社でも実務上ほぼ問題ないと思います。「株式会社じゃないとダメ」という場面はそれほど多くないです。
ただ、複数事業への展開や将来的にフランチャイズ加盟なども視野に入れているなら、株式会社の方が動きやすい印象があります。設立コストの差は税率差で数ヶ月〜1年以内に回収できる水準なので、迷ったら株式会社を選んでも大きな損はないかなと思っています。
法人化後にやること(実務メモ)
登記が完了した後に「これ早めにやっておけばよかった」と思ったことをまとめておきます。
ステップ1:法人口座の開設
審査に1〜2ヶ月かかるケースがあります。登記申請と並行して動き始めるのをおすすめします。登記完了後に動き始めると、法人口座が使えない空白期間が長くなります。
ステップ2:法人カードの申込
設立直後は実績がないので、審査が通りやすいカードから始めるのが現実的です。
| カード | 年会費 | 審査通過しやすさ | ポイント還元 |
|---|---|---|---|
| ライフカードビジネスライト | 無料 | ◎ | なし |
| 三井住友ビジネスカード for Owners | 1,375円〜 | ◎ | あり |
| セゾンプラチナ・ビジネス・アメックス | 22,000円 | ○ | ◎(JALマイル) |
設立直後で実績ゼロなら、ライフカードビジネスライトか三井住友ビジネスカード for Ownersから始めるのが無難だと思います。セゾンプラチナは年会費22,000円の負担があるので、月商が安定してから切り替える方が現実的です。
ステップ3:税理士への依頼
役員報酬をいくらに設定するかで手残りが変わります。「役員報酬シミュレーションと法人化後の節税設計」をセットで依頼するのをおすすめします。数字を整理して渡せば、試算自体は1〜2時間で出てきます。ここをケチって自己流でやると、後から「あのとき専門家に聞いておけばよかった」となりやすいです。
ステップ4:小規模企業共済・経営セーフティ共済への加入
法人化後にやることリストの中で、節税効果として一番インパクトが大きいのがこれです。手続き自体はそれほど複雑ではないので、法人口座が開設できたら早めに動くのがいいと思います。
副業・会社員の方への補足:社会保険の話
会社員のまま副業でスペースを運営している方に向けて、よく誤解される点を補足しておきます。
会社員は本業の会社で社会保険(健康保険・厚生年金)が適用されています。そのため、法人化したからといって「国民健康保険の負担が減る」という話は会社員副業者には関係ありません。SNSや記事で「法人化で社会保険料を節約」という情報を見かけることがありますが、会社員副業の場合は前提が違うので、そのまま受け取らない方がいいです。
会社員副業者が法人化で得られる節税効果は主に以下の3点です。
- 経費計上の幅が広がる(法人では計上できる経費の種類が増える)
- 役員報酬の設定で所得を分散できる
- 共済制度の活用で節税の幅が広がる
この3点が中心で、これだけでも十分な効果があります。「社会保険料の節約」は関係ないので、その部分で判断がブレないよう気をつけてください。
ポータルサイトの手数料と自社サイトの話
「法人化したらポータルサイトの手数料は変わるの?」という質問をたまに受けますが、法人化しても手数料率は変わりません。
現状のポータルサイトの手数料(私の実績値ベース)はこちらです。
| ポータルサイト | 手数料率 |
|---|---|
| インスタベース | 35% |
| スペースマーケット | 30% |
| スペイシー | 30% |
| かしかし | 30% |
| くーある | 15% |
| 自社サイト(Stripe等) | 約3.6%(決済手数料のみ) |
平塚スペース単体でも、ポータル手数料が年間約88万円(売上の約30%)かかっています。法人化と並行して自社サイトへの直接予約を増やせれば、手数料が30〜35%から約3.6%まで下がるので、固定費削減としてのインパクトは非常に大きいです。
私はWordPress(SWELL)+Ameliaで予約システムを自分で構築して、自社サイト経由の予約も受け付けています。ConoHa Wingで動かしているので月額コストも低く抑えられています。SEとしての経験が活きている部分です。
ただし、ポータル経由で来たお客さんをメッセージや予約確認メールで自社サイトへ誘導することはポータルの規約違反になります。絶対にやらないようにしてください。
スペース内にQRコードを設置して自社サイトへ誘導するやり方をしている運営者は多いですが、ポータルの規約上はグレーゾーンです。判断は自己責任でお願いします。
まとめ
法人化のタイミングは「課税所得が330万円を超えたら本格検討」が一つの目安です。
| 法人化を検討する3つの理由 | 内容 |
|---|---|
| 税率差が体感できる金額になる | 個人(給与と合算)vs 法人約23%、課税所得400万円で年間30〜40万円程度の差 |
| 法人顧客・資金調達に対応できる | 企業の経理処理・融資審査のハードルが下がる |
| 共済制度で節税の幅が広がる | 年間最大324万円を節税枠として活用可能 |
設立費用は合同会社で最低6万円〜、株式会社で20〜30万円程度。税率差だけで考えても、数ヶ月〜1年以内に回収できる水準です。
「まだ早いかも」と思いながら先送りしていると、その間は毎年余分な税金を払い続けることになります。私が実際にそうでした。1年先送りした結果、その分だけ損をしたという自分の経験から、同じ状況の方には早めに動くことをおすすめしたいです。
副業でスペースを運営しながら法人化の判断に迷っている方の、少しでも参考になれば嬉しいです。
今日やること(これだけでOK)
確定申告書を開いて「課税される所得金額」が330万円を超えているか確認する。
超えていたら、今週中に税理士へ「役員報酬シミュレーションと法人化後の節税試算」を依頼するのをおすすめします。試算が出たら、登記・法人口座・法人カードの3つを並行して進めると、法人化後の「使えない空白期

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